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100の恋、100のワイン
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ラ・ルーチェ マネージャー 小西優司
2008,05,15公開
『 100 の恋、 100 のワイン』第 1 話

時計の針は19時24分をさしている。

ようやく忙しさが一段落し、携帯に妻からのメールが届いている事に気が付く。
―夕飯はうちで食べるの?―
なんて返事をすれば自然か、一瞬の思考のあと微かな罪悪感とともにメールを返信する。
―いや、今日は接待があって朝までになりそうだから。明日の朝帰るよ。―
鞄の中に荷物を詰めながら妻からの返信を待つが、送られては来ない。

こんな風に返信が来なくなってもうどれくらいになるだろうか、そんなことを考えていたら携帯電話が鳴った。着信メロディーから妻でない事がわかる。
「ねぇ、今晩ってどうするん?来れるんやっけ?」
甘ったれた、若い女の声。僕は携帯電話を右手から左手に持ち替えながら答える。
「ちょっとだけ接待に出なくちゃならないんだけど、行くよ。」
「ほんまに?来うへんのやったら出かけよかと思ってたから。」
「どっちがよかったの?」
「それやったら、待ってるわ。」
彼女はそれだけ言うと電話を切った。

接待は思ったよりも時間がかかった。相手は大のワイン好きらしくこってりとワインの薀蓄を聞かされ、ワイン・バーを梯子し最後には700本所有しているというボルドー・ワインのコレクションについて延々と演説をぶたれた。挙句の果て、そのコレクションを見せてやるからといわれたが、そちらは丁重にお断りしてタクシーに乗り込んだのが深夜の1時をまわった頃だった。
タクシーの中から何度か電話したが彼女は出なかった。
「お客さん、目白はどの辺で止めればいいですか?」
そう運転手に声をかけられるまでどうやら眠っていたらしい。
「ん?ああ、駅前でいいですよ。」
「じゃ、着きましたよ。」

支払いを済ませてタクシーを降り、マンションへ向かう。全面ガラス張りのエントランスをくぐって銀色のエレベーターで6階へ。どんな風に仕事をすれば20代の半ばでこんなマンションに住めるのか、僕には見当もつかない。
合鍵を使って部屋に入ると中は真っ暗でTVさえついていない。彼女はそんな暗い部屋の中でソファに座ってじっとTV画面を見つめていた。
「どうしたの電気もつけないで。」
「おそなるんやったら、電話くらいして。」
やや怒気のこもった彼女の声が薄暗闇の中に響く。
部屋の中には香水の匂いが充満している。目が慣れてきたのか、彼女の怒気に気圧されて酔いが覚めたのか、ようやく彼女の様子がわかった。
よく見ると彼女は僕の知らないワンピースを着ていた。
「そのワンピース、見た事ないよね?」
「ご機嫌取りなんか嫌やわ。」
「そうじゃないよ。」
ゆっくりと立ち上がった彼女が近寄ってくる。香水の匂いが強くなる。
「ワンピースなんかに、興味ないんやろ?」
挑発的な言葉。
「そんなことないよ。」
僕はそう言いながらワンピースの背中のファスナーをゆっくりと下ろす。つるりとした生地のワンピースは彼女の身体を滑り落ち床に投げ出される。彼女は生まれたままの姿で立っている。
「なんにも着けてないの?」
「着けてるやんか、シャネルの5番。」
そう言って柔らかく微笑み、彼女が僕にくちづけをする。

やれやれ、それじゃマリリン・モンローだ。
ワインワインの名は『ハイランド・サンタルチア・ハイランズ/モーガン』

カリフォルニアで生まれた極上の白ワイン。シャルドネのポテンシャルをこの上なく引き出し、且つ洋ナシやアプリコットの風味を持つ。華やかで妖艶な香りは、一度飲むと忘れる事の出来ない官能的な背徳の味わい。
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小西優司・・・1977年6月26日生まれ  かに座 A型 京都市出身

西陣に生まれ、祖父の姉が祇園の舞妓という家に育つ。
京都の様々な風習や、伝統、京都人の気質に反発し、18歳の時にイタリアヘ渡るも、 そのことにより以前よりも強く「京都人としての自分」を意識するようになる。 帰国後、上京し現在の「青の会」の前身、「アクト青山」に入所し俳優となる。 その一方で東京のイタリアンを転々とし、現在のLA LUCEのマネージャーとなる。
近代古典文学というクラシックな演劇と、時代の先端だったイタリアン。 正に新旧あいまみえてという生き方に、「京都の人」たる真骨頂がある。 出演代表作に「桜の園」チェーホフ 「華々しき一族」森本薫 「牛山ホテル」岸田國士 また、シャンパンをこよなく愛し、シャンパンの無い人生は考えられないという・・・。
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